上顎智歯の抜歯の場合
歯が原因で蓄膿症になる?
上顎の骨の中には、鼻の横に上顎洞という大きな空洞があります。この空洞は副鼻腔(鼻周囲の空洞)の一つで、もともと鼻腔と小さな穴で交通しています。鼻が悪くなると、ここに膿が貯まり、いわゆる蓄膿症が起きるわけです。
蓄膿症の原因のほとんどは鼻の病気にありますが、歯が原因の場合もあります。上顎洞が、歯の根の方に拡がっている形をしており、根尖(根の先)が上顎洞内に突出している場合、歯の炎症(ほとんどが虫歯が原因)により上顎洞炎、蓄膿症をおこすことがあります。
上顎桐底に歯の根の先が突き出ており、歯による蓄膿症を起こしやすい | 上顎洞底(上顎洞の一番底:赤線)と歯の根の先は離れており、歯による蓄膿症は起きにくい。 |
智歯の抜歯でロと鼻が交通する?
智歯の抜歯では、智歯の根と上顎洞の底との位置関係が重要です。歯の根が上顎洞内に突出している場合、抜歯により、上顎桐に穴があき、最終的に鼻腔まで交通しますので、ロから飲んだ水が鼻から出てしまう症状が出現します。こうした合併症が引きおこる事がありますが、頻度としては稀なものであり、もし穴が開いてしまった場合でも、ほとんどが自然閉鎖します。
しかしながら、穴が一ケ月経っても閉鎖しない場合や上顎桐炎を合併し排膿(膿が出る)が続く場合は、穴を閉鎖する手術が必要です。
これは、智歯だけではなく、犬歯より後ろの臼歯の抜歯では同じ事が言えます。 術前のCT撮影等断層撮影による診断で歯の根と上顎洞の関係をほぼ確定でき、下顎の時と同様に大変有用です。
そのため、当クリニックでは患者様にCT・断層撮影をおすすめするケースもあります。
上顎洞底に歯の根の先が突出しており、上顎洞粘膜(黄色の矢印)が腫れて上顎洞炎を引き起こしている。 | 抜歯により上顎洞底に穴が開いた状態。口と鼻が交通する(黄色の矢印) |
難しい抜歯の原因は?
上顎は下顎に比べ、骨が柔らかいため、智歯の萌出が真っ直ぐで、手前の歯と引っかかりがなければ、抜歯は容易なことが多いものです。
上顎智歯で難度の高い抜歯の原因は
- 智歯の埋まっている程度、骨の中の深さ
- 萌出の方向(水平に、横になるほど難しくなります。)
- 智歯の根の形(根の数、痔曲など)
- 手前の歯との引っかかり具合
- 骨の硬さ(骨が硬いと麻酔が効きにくい事が多く、又歯の根と癒着している事もあります。)
- 器械の到達性(口が元々開きにくい、唇があまり伸びないなど器械がロの中に入れにくい)
などが挙げられます。